Manual Medicine 大場 弘 Blog 

マニュアルメディスン(徒手医学療法)は全身をトータルに捉え身体の連関性を追求する医学です。
ここではマニュアルメディスンによる治療法や、症例などをご紹介していきたいと思います。

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学術大会報告
 

得体の知れない痛み

 

日本カイロプラクティック徒手医学の学術大会が、94/5日と福岡市で開催され、二日目でしたが参加してきました。今回が第12回目の学術大会です。

1回目の学術大会設立には私が大会長を務めさせてもらったのですが、あれから12年が経ったわけです。

 

今回は、幸いにも担当する仕事もなく、ひっそりと参加しようと思って行ったのですが、会場に入るやいなや、大会長の荒木寛志先生それに大御所の馬場信年先生には“九州の学会には来てもらえんのかと心配しておった”と迎えてもらい、なんだか心あたたまる感じがしました。

 

今回の学会は九州カイロプラクティック同友会のみなさんはもちろんのこと、いろいろな方々のご協力があったようです。

とくに、大会のメインテーマ『痛みを考える』をプロデュースされた守屋徹先生(山形県酒田市)のご足労は大変であったろうと推し量られます。

 

日本で痛み研究の第一人者であった熊澤孝朗先生のご研究に触れ、インタビューを申し込まれたり、そのときのお話をテープに起こしたりと、かなりご苦労をなされたようです。

 

ところが、学会開催が迫っていた折に、熊澤孝朗先生が突然にもご逝去なされ、守屋徹先生にかれましては、たいへん心を痛めたようでもあります。

このときのインタビュー原稿の校正を自らの責任として引き受けてくださった熊澤孝朗先生に、それが最後の雑務としてご負担をおかけしたのではないかと声を詰まらせていました。

 

この貴重なインタビューの内容は、日本カイロプラクティック徒手医学会のホームページに掲載されているとのことです。

 

私自身、熊澤孝朗先生の書かれたもので、とても印象に残っていることがあります。「痛みは歪む」と書かれた表題の章でした(脳を知る、細胞工学別冊2000)。

その伝わってくる感覚的なイメージが、私たちの触感的なイメージにとても合い、記憶にのこっております。

 

痛み系は侵害刺激や精神的ストレスによって歪み、可塑的な変化を受けて慢性的な痛みを生じさせるというコンセプトだったと記憶しています。

 

今回は残念なことに熊澤孝朗先生のご講演を拝聴することができませんでしたが、熊澤孝朗先生の足跡を継がれておられる先生方のご講演をお聴きし、たいへん勉強になりました。

 

 

痛みのなかで、RSD(反射性の交感神経ジストロフィー)と呼ばれていた得体の知れない痛みがあります。

ご高齢の患者さんが転倒して腕を折り、長い間ギブスで固定しなければならないことがあります。最近、私の患者さんでもこのようなことがありました。

 

長い間こうして動かさないでいると、腕や手が腫れ上がって、我慢できないほどの灼熱痛が生じることがあるのです。骨折などの損傷が治った後でも、意味の分からない痛みで苦しめられることがあるのです。

 

現在、国際疼痛学会ではこのタイプの痛みを、複合性局所疼痛症候群CRPSのタイプ気箸靴栃類しているというのですが、このメカニズムはまだ解明されていません。

 

今回、住谷昌彦先生(東京大学医学部付属病院・痛みセンター)が、私たちの学会でこの痛みのメカニズムについて、たいへん興味深くしかもとてもショッキングな研究成果を講演されました。

 

住谷昌彦先生によれば、視覚的な情報と身体からの体性感覚情報にずれが生じているために、脳が正しく感覚情報を統合できず痛みを発生させるのだと言うのです。

 

長いこと腕を動かさずにいると、腕の関節や筋肉からの情報が途絶えてしまいます。ギブスがとれても、情報が正しく伝達されているとは限りません。


ギブスをしているときでも、どこか指でも肘でも肩でも動かすことができるようにしておくことがとても大事になります。

一方、視覚的な情報は私たちの脳ではきわめて大きな比重をもっています。鏡を使って、健側の腕の動きを見ながら、患側の腕を少しでも動かすようにイメージをもつことはきわめて有効なリハビリにもなります。


RSDのような得たいの知れない痛みが発症するのは、空間にどのように腕が動いているのかという身体の位置感覚と、視覚的な空間での身体の動きのイメージが合わなくなっているというのです。

 知覚と運動が統合される情報の循環によって、身体運動の円滑な営みがあるのですが、それが入り口のところでミスマッチが起きてしまっているというのです。


運動の意図にそって腕が動くためには、見えないところで実に複雑なはたらきがなされています。その一つが運動に必要な血液の供給ということがあるでしょう。これには交感神経の活動が裡に働いているわけです。

神経系のさまざまな働きは互いに関わり合いながら円環的に情報が循環しています。

 

複合性局所疼痛症候群CRPSのタイプ気任蓮∋覲亰呂反搬隆恭亰呂出会う大脳(頭頂葉)という最高レベルで、いわば新皮質の統合不全が起きていることになるのでしょう。

 

その結果、脳幹の網様体を介して交感神経活動に深刻な影響を及ぼすことが考えられます。

細かい細胞分子レベルでの機構はわかりませんが、きっと炎症や免疫的な機構をも巻き込んだかたちで痛みが腕や手に現れてくることになるのでしょう。

このように、住谷昌彦先生のご講演を聴きながらあれこれと考えておりました。

 

最後に、住谷昌彦先生に質問をさせていただきました。

それでは、もともと目の見えない人達はRSDが発症することはないのではないかと?

知り合いの研究者の仲間で話し合うことがあるそうで、やはりそうした事例はこれまでないとのことでした。

 

とても興味深くしかもショッキングなお話でした。

こうした貴重な学会を開いてくださった荒木寛志先生をはじめ実行委員のみなさま方にはお礼を申し上げます。

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