Manual Medicine 大場 弘 Blog 

マニュアルメディスン(徒手医学療法)は全身をトータルに捉え身体の連関性を追求する医学です。
ここではマニュアルメディスンによる治療法や、症例などをご紹介していきたいと思います。

<< September 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
 
SPONSORED LINKS
RECENT COMMENT
MOBILE
qrcode
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | | - | - | pookmark
マニュアルメディスン研修会報告
身体呼吸療法の技術と科学性 

 

 

身体呼吸療法を中心とした研修会をいくつかのところで行ってきました。

この数ヶ月の間に50名ほどの人達が熱心に身体呼吸療法を学んでくれたことになります。

 

身体呼吸療法では先ず身体の呼吸運動を感じ取られなければ始まらないので、初めて学ばれる方々には大きな障壁が最初に立ちはだかっているようなものです。ほとんどのセミナーは、テクニックを指導するのに懇切丁寧なマニュアルがあるのが普通ですが、身体呼吸療法では先ず自分の主観的な感覚で感じることが要求されます。マニュアル的なやり方から入ることに慣れ親しんでいる方々には面食らってしまうようです。感じることさえできれば、あとは自然にすべてがわかってきますので、これほど実践的なことはないのですが、どうしても思考が先に立ってしまうと脇道に入ってしまうようです。おおむね女性の方々は最初から素直に感じ取ることができるようですが、男性はいろいろと思考を繰り返しながら紆余曲折を辿ってしまう傾向があります。女性の中には驚くほど感性豊かな方もいまして、最初からかなり深く理解できる方々も少なくありません。

 

923日に名古屋で行った研修会では過半数が若い女性の方々で、みなさんの感性の良さに驚かされました。伊澤勝典先生がこの研修会を主宰されていまして、彼の人柄・感性がこうした方々を惹きつけているのでしょう。帰り際、振り返えって見ると、駅の構内でずっと私の後ろ姿を見送ってくれていた女性陣が想い出されます。みなさんとても魅力的で感性豊かな女性達ばかりで、とても楽しい一日でした。

 

伊澤先生の指導法は、身体呼吸療法の基本の上にさらに彼自身の経験に基づいた方法論を工夫されていまして、みんなで楽しくワークしながら学び取れる進め方でした。そして、ひとり一人が自ら簡単に実感できるようにと、全身を毛布で巻いて適度な圧力をかけたままで寝かせるなど、たいへんおもしろい試みもありました。心理的に問題がなければ、気持ちの良く自然に身体呼吸が出てきそうです。

伊澤先生はなかなかユニークな方法を開発されていて、私自身とても勉強になりました。特に、ヨガのポーズを連想するような四肢のポジショニングで、正中の呼吸軸を整えるように想えた彼のメソッドはたいへん参考になりました。被験者は仰向けになって、両下肢を屈曲させて両膝を開きます。そしての足の底面を合わせて、施術者はゆっくりと両下肢を伸ばしていくように軽い牽引をかけていきます。途中、滑らかに移動する動きに抵抗感が感じられたらその位置でしばらく休息させ、そしてまた伸展させて最終的に両足の底面は離れて内側面だけが接触するように完全に伸展させる操作です。私も帰ってきてから、伊澤メソッドを試していますが、開いた両下肢を滑り落とす過程で、両下肢と恥骨がなす円環を何か流れる感じが出て、なかなか良い方法と実感しています。左右の両下肢の身体呼吸運動リズムが同調し合うようでこれはしばらく実践的に研究してみようと思っています。この他に上肢の方法もあるのですが、紙面上で公開してしまうのも伊澤先生に申し訳なく、しかも誤って解釈しているところもあるかも知れませんのでこれだけにしておきます。

私も被験者になって実際にやってもらいましたが、術後の立つ感覚を比較してみますと、右足の回内が見事に改善している感じがしました。こうして被験者や実際の患者さんに変化を気づいてもらうことはきわめて意義深いものと感じます。

 

 

身体呼吸療法を学ぶ人達に、いかに身体のなかの波と潮を実感・体験してもらえるか、私自身、ちょっと考えるようになってきました。ひとり一人、手を取って指導することができれば一番良い方法なのですが、人数が多いと十分な細かな指導がゆきわたりません。

そこで、東京の月例研修会では、袋に綿を入れて水で満たしたものを用意してみました。上の方から袋を圧したときの水圧(勢い)を感じてもらい、次に、その水の圧が退いていくとき、水の移動の様子を潮の動きに喩えて感じてもらいました。中に綿が入っているとその繊維の中を移動する水の動きは、結構、触感することが難しいのですが、でも意識が袋の中の水に広がっていくようになるとわかってきます。こうした準備をしてから、実際に身体の内圧変動と体液の様子を感じ取ってもらうようにすると、言葉だけの指導からよりも実践的でわかりやすいようです。やはり感性的なことは言葉ではとても伝えられないことです。こうしたちょっとした水力学的なモデルを使って感性を高めることをやってみたわけです。身体のなかの波と潮を感じ取っていくための一つの手段となるでしょう。

 

 

ところで、オステオパシー・ドクターのW.G. サザランドが最初に表現したところの、身体のなかの波と潮、この水力学的な身体の流動性の特質は、経験を積めばたしかに触感で発見できる感覚です。しかし、初心者が患者さんに触れてすぐにそれが分かるということでもありません。正直言って、みなさん分からなくて当然なのです。

 

私が身体呼吸運動と呼ぶ内圧変動は患者さんが眠りに入ったような状態になってはじめてよく分かります。それは何故でしょうか?

 

身体呼吸運動はハラ呼吸基盤としています。ハラ呼吸とは横隔膜呼吸による横隔膜と骨盤隔膜の間の内圧変動です。横隔膜の下方への圧力は骨盤隔膜によって対峙され、下腹部に圧変動の核が生じます。これを基盤にしているのです。

 

横隔膜呼吸は覚醒状態の呼吸ではありません。それは眠っているときに起こる呼吸運動です。起きているときに横隔膜が呼吸運動に関わっているとは言えないようです。横隔膜以外の呼吸補助筋が主に胸郭を拡張させて呼吸をしているのが、日常生活で起きているときの呼吸です。横隔膜が主に動き出すときの呼吸とは(ハラ呼吸と縦の呼吸運動と呼んでいますが)、眠っているときに現れるものです。したがって身体呼吸療法では、リズム的な刺激で眠りに誘うようにしているのです。たとえば一つの方法として、貧乏揺すりのような刺激を与えて、身体呼吸運動を誘発する方法を教えています。仙骨から骨盤隔膜に振動を加えるのです。そうしますとフッと身体呼吸運動の種になるようなリズムが立ち上がってきますので、それをとらえるのです。施術者がそのリズムをとらえると、自然に患者さんにそれがフィードバックされるようでしだいに増幅されていくのです。この操作は私がこれまでの臨床経験から自然に結実した最近の誘導法のかたちです。ここで貧乏揺すりと言いましたが、最近Erick Franklinという方のボディワークの本を見ていましたら、小太鼓を叩くようにスティックで小太鼓の膜とみなした骨盤隔膜をたたいているイラストがありまして驚きました。まさにそんな感じなのです。しかももっと驚いたことは、下腹部からお腹の正中に噴き上がる噴水のイラストです。骨盤隔膜の振動が体液を噴水のように噴き上げる力動勢を表現しているのです。科学といえなくとも、たがいに共感しあえる間主観的な真実があるということになるでしょう。

 

間主観的な現象は科学として成立するために重要な発見となるのです。

 

身体呼吸療法は科学として実証できる状況証拠を最近見つけることができました。循環系の研究で、まさに身体呼吸運動に関わるリズムが自律神経の活動波として注目されているのです。

詳しく紹介するとなるとここではたいへんですので、いつかきちんとしたReviewとして論文のかたちでまとめたいと思うのですが、要点だけ述べてみます。

 

筋肉の交感神経の活動リズムを周波数解析してみると、二つの波が現れるのです。一つは周波数0.1Hzの波で、二つめは0.3Hz近くにピークを持つ波です。この二つめの波が呼吸波と一致しています。すなわち筋肉への交感神経活動に呼吸の波が入ってきているのです。この二つの現れ方が休息時と活動時では変わります。筋肉の活動が高まると後者の波の現れ方少なくなります。このことこそ、私が長い間、仮説として主張してきたことなのです。身体の隅々まで呼吸運動の波動が及ぶことがきわめて重要であり、痛みや筋肉の異常な緊張はこうした波動が及んでいないために生じていると主張してきたいきさつがあります。

 

たぶん私が初めて頭蓋の内圧変動をきちんと測定し、Dr.サザランドの主張した頭蓋のリズミカルな膨張収縮運動を明示したと思うのですが、あれから20年近く経ったのでしょうか、今ようやく身体呼吸療法の生理学的な根拠が明らかになってきたという感慨がわきあがってきます。

 

身体呼吸療法は単なる手の術(手当)ではなく、生理学的な機構に基づく確かな治療法として発展できるのです。身体呼吸療法を学びたいと思っている若い人達には、志を高く持って学んで欲しいものです。

 

 

 

 

スポンサーサイト
- | 11:33 | - | - | pookmark
コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。