Manual Medicine 大場 弘 Blog 

マニュアルメディスン(徒手医学療法)は全身をトータルに捉え身体の連関性を追求する医学です。
ここではマニュアルメディスンによる治療法や、症例などをご紹介していきたいと思います。

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能楽師 山村庸子先生に学ぶ(その一) 

声と息

文化の日、明治神宮では恒例の古武道の演武会が催されていて、柳生新陰流兵法の演武を応援に行くことになっていたのですが、気がついたときには予定の時間から1時間が経っていました。おかげで明治神宮に着いたときにはすでに東京柳生会の演武は終了していました。これほど時が経つことを本当に忘れてしまったことが、以前にあっただろうかと思わずにいられないほど、朝からあっという間の4時間、能楽師の山村庸子先生とのお話しに夢中になってしまっていたのです。とにかくいろんなことを教わることができました。その中からなにを取り出してまとめていいか本当に迷ってしまうほどの幅広く深い内容のお話しでした。

○田○○子さんのご紹介で、今年の春に山村庸子先生が演じられた羽衣を観賞する機会に恵まれました。まるで裾野の広がる富士山のように、静謐さのなかに安定してたたずむ立ち姿は今でも脳裏に蘇ります。剣術で、あのような構えと立ち方ができたらなあと、とても刺激を受けたのです。

山村庸子先生は女性としてめずらしい能楽師のお一人で、伝統的に伝えられてきた和の発声を、自然の声を失いつつある今日の日本人に蘇らせたいと精力的に活動をされています。最近の母親は優しく弱々しい声で子どもに語りかけるために、“だめ”という言葉に響きを持てない。そのために子どもを制することができなくなっている、と独特の観察眼から一つ興味深い話が印象に残りました。

日本語はあまり顎関節を動かさずとも、口の動きだけでも十分に話すことができると指摘されました。欧米人のように大きく縦に口を開閉させて話すことはないわけです。日本古来の発声は、息の遣い方を意識して、息を十分に遣うことだそうです。鼻から前に抜けるような声ではなく、軟口蓋で鼻に抜ける息を閉めて、かわりに顎の奥方向に息を広げ、声帯の響きが身体に鳴り響くようにするのだそうです。息をつかわず声だけでの謡と、息を十分につかった謡の違いを演じてくださいましたが、息をつかった謡は、咽の奥から響いたり、胸の中央から響き渡ったり、あるいは横隔膜のある胸郭の底部から広がったり、まさに多彩で豊饒な音色と響きが、聞いているこちらの身体に伝わってくるようでした。
山村庸子先生は、能に使う鼓や小太鼓などの鳴り物を持参して、小学校で特別授業をやることがあるそうで、そのとき子ども達がいちばん驚くのは楽器の響きではなく、山村先生の声の響きに驚くと話されました。本当に子ども達の驚きがわかる気がします。マイクを使わずに、しかも面(おもて)で口をふさいだ状態で、会場いっぱいに響く謡で能を演じるわけですから、伝統的な和の発声にはやはり独特の技能があります。

私の理解としては、息をつかって声帯で生じた音を、上顎の奥に誘導し、そこから上方へ、あるいはまっすぐ咽頭の後壁へ、あるいは脊柱前面に沿って身体へ逆戻りさせるように、下へ下へと響かせる多彩な息の遣い方のようでした。そのために、「根を張る」という表現をされていましたが、どうゆう感覚なのか・・・。

山村庸子先生が話され実演されたことを正確に再現できているとは言えないかも知れませんが、とりあえず話を進めさせてもらいます。

山村庸子先生がおっしゃるには、日本の伝統的な和の発声の特徴は、息を逃さず、身体に溜めるというのです。息を出し切れば、自然に息はスッと入ってきますが、その息を腹で身体に保持しつつ、少しずつそしてできるだけ長く、音の響きに代えていくのです。声帯だけに頼って声をつくるのではないというのです。声帯の声だけでは響かないというのです。声は息にのるものとして捉えています。

人はそれぞれが自分の自然音を持っているので、その音を見つける必要があると言います。声は出そうとせず、息を適量に声帯にまわして声をのせるという意識だと言います。息は鼻の方向に抜かずに、後方奥にそして下へ下へと導くことでさまざまな音色に変えていくのだそうです。子どもの声は上方に、しだいに下方へ導くことで、若者から中年へと、年齢に応じた演じ方ができるのだそうです。翁の声はお腹に響くように導くということでいちばん難しいと言うことでした。腹から響いてくる声を出すわけです。すごいものです。

私自身、本来の声は高めで、男性は女性と違って腹式呼吸が身に付いているのでコツさえつかめばできるということなのですが・・・

女性は、もともと腹式呼吸が身に付いていないため、それを覚えることは結構たいへんなことを話されていました。社交的な女性は、人に話したいという気持ちが強いけれど、呼吸ができていない人は、話すとき声帯で声を出そうとするために、顔が前に出てくるところがあるというのです。そのために、頸椎に負担がかかりやすいとまで観察されていることには驚きでした。

さて「息を溜める」ということをよく話されました、息を溜めるとはどうゆうことなのでしょうか。身体感覚から出てきている表現であるために、山村庸子先生も解剖生理学的にどのようなことであるか理解したいところであるようなのですが・・・。

横隔膜が下がったところで、それに対抗するように下から上方に力を感じられ、腹にボールがあるような感覚であると言います。解剖学的には腹腔を一つのボールとみなしているのでしょう。

解剖学的には骨盤隔膜の張りと、深部の腹筋群のはたらきもあるわけですが、おもしろいことに、息を響きに代えて少しずつ出すにつれて下腹部は引っ込むのではなく、前に膨らんだまま緊張している感じがあるようなのです。もちろん息がいっぱい出ていくようであれば、腹筋の緊張が増していくぶんなりとも引っ込みますが・・・、とにかく下腹部の充実感は保たれているという不可思議なところがあります。もちろん腹式呼吸が基本となるのでしょうが、さらに特別になにかありそうなのです。

今度、東中野にある梅若能楽学院を訪ねて、指導を受けることにいたしました。また、ご報告させていただきます。

山村庸子先生のお話しと実演を感じてみたい方は下記の催しに参加されてみてはどうでしょうか。
第7回緑桜会 こころみの会 「日本の声」
11月30日(日)午後1持から、杉並能楽堂にて(丸の内線中野富士見町駅徒歩5分):
・山村庸子先生の謡の発声
・ 復曲狂言「東西迷」 山本東次郎氏
お申し込みはFax03−3292−3267(緑桜会 山村庸子)でお願いします。
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